審査講評Review

浅井 愼平さん(写真家)

  • 今回のCLTコンペについて

    力作が多かったと思います。今の時代の中でコンセプトをどう理解したかが問われた。
    今の文明が人々を超えて進んでいる中で、立ち止まってCLTを考える機会になったのではないでしょうか。
    時代の力、人の在り方、部材が幸福に使われているか等々、現実に押されてしまう中で、人の夢、人が望んでいる未来、あるいはファンタジーや根源的な問いへのアイディアがどのように集約されているかが審査のテーマになったと思います。

  • 最終案に都市的な案が残りましたがその事について ― また、これからのコンテストについて

    結果的にそうなったと思います。
    水中案もありましたが、時代の生き方、可能性がためされているからではないでしょうか。
    来年以降、我々の発する課題・メッセージが問われていると思います。
    同時代をどうデザインするかだと思います。
    ちょっと先、後の人たちに何を残せるか。金田さんは振れ幅(表と裏)のある、シニカル、警鐘を鳴らす案の話をされていました。
    技術論的な話ではそうなろうかと思います。

  • 今回の審査について

    今回は謙虚に素直に思考したかったので、自分で答えを持たないで審査に臨みました。
    議論をしないと答えに行きつかないと考え、結果それが良かったと思います。

浅井愼平

審査委員賞「"Break"water ~海と住まう人の未来~」

金田 充弘さん(東京藝術大学 准教授)

  • 今回のCLTコンペについて

    審査は、選ぶ人によって、選ばれる人が違ってくるものだと思っています。今回は落ちた方も審査員が違えば選ばれた可能性が十分にあった力作がいっぱいあったと思います。
    そのなかで今回初めて審査に参加させていただいたのですが、浅井さんと涌井さんお二方ととても楽しく、作品を選ぶ過程に参加させて頂けたので、それが選ばれた結果に反映されているのではないかなというふうに思います。
    CLTの技術的素材的な側面に、ついフォーカスしがちになるんですけれども、それによって社会をどのようによくできるのか、というところに議論がフォーカスできたのが非常に良かったのではないか、いい作品が選べたのではないかなと思っています。

  • 審査員賞について

    CLTを使っていくなかで、木といってもいいかもしれないんですけど、その他の材料と、今、何が一番違うかといったときに、CLTを使う理由として、やはり木材の量を使うことにより森林を循環させることになり、結果として山もよくなるし、環境にも良いというなかなか珍しい素材だと思うのです。今、鉄をいっぱい使いましょうというのはないじゃないですか?
    では、CLTをどういうところにいっぱい使えるのか?しかも、意味がある使い方でいっぱい使えるのかと考えたときに、もしこの案の通りに実施したら相当量がでますよね。
    審査の途中でも申し上げましたけど、薄い合板でできるようなことを、CLTでやっても仕方がないので、やはりこのCLTのボリューム感をもちながら、それを大きくいっぱい使えるとなると非常に可能性がある案なのではないかなと思いました。
    この案にも朽ちていくというストーリーも入っていますので、ある時間軸の中で山からとられたものが、CLTとして生産され海に、こういう形でつくられ、それが段々、段々、崩れて積層した上に、また新しいものが堆積というか、積層されていくという意味では、時間の積層というものが非常に表現されていると思いました。
    タワーの案も社会問題解決に非常に良い提案なんですが、もう少し楽しい絵にしてほしかったですね。もっとワクワクする絵だったらよかった気がしますね。本質的には、非常によい提案だと思います。
    逆に言うと最優秀賞になった作品はもっと暗い絵だったらもっとよかったと思います。あるサイズを超えた都市、たとえば東京はあるサイズどころではなく非常に大きい都市ですが、その大きな都市というのは表だけでできているのではなくて、表があるから裏があり、裏があるから表が面白いところがあるなかで、都市の裏側に着眼したのはすばらしい。東京らしい路地裏ですし、そこをあんまり表側にしてしまう提案だと、裏が表になりましたというよくありそうな提案になってしまう。やはり裏は裏感を残したままで、より良くしていくと、東京の路地裏楽しいよ、というのをCLTで作り出すことができ、ほかの都市とは違う東京らしい魅力の作り方かなと思いますし、そこがやはり最優秀賞に選ばれた理由だと思います。

  • CLTの今後について

    CLTだけではないと思うんですが、ある素材を普及させようとした時にコンテスト等を実施してCLT を活用したアイディアを募るというのはいいいと思うのですが、その場合はCLT至上主義にならずに、CLTの利点である他の素材とハイブリットできるということも提案してもらうようにしてはいかがでしょうか。
    たとえばCLTとスチールとか、CLTとRCとか、CLTの新築と既存の建物とか、さまざまな組み合わせをすることによって、CLTをより使う場面が増えるというのが今後重要になっていくのではないかと思います。

  • CLTコンペの今後について

    コンテストの審査は今回はじめてだったので、コンテストがアイディアとより実現性を重視したものという2部門にわかれたてことを実はよくわかっていませんでした。
    今後も同じような形式で実施されるのであれば、応募される方に、今回の審査結果を見てアイディア部門はこういう提案が求められてるのかな、というのが伝わり、それによって次回以降も未来へのメッセージ性 の強いアイディアコンテスト部門になるのではいかと思いますし、そこに期待しています。

金田充弘

最優秀賞「CLTP(CROSS LAMINATED TIMBER PASSAGE)」

涌井 史郎さん(造園家)

  • 今回のCLTコンペについて

    今回で4回目を迎えたわけですが、これまでのコンテストでは作品を審査するにあたって、ある時には審査員のコメントをみんなに聞いていただくとか、いろんな方法を模索しながらやってきたのですが、今回の審査は非常に難しかったですね。
    なぜならば、CLT協会の努力の賜物だと思いますが、応募者の皆さんがCLTという部材を段々、理解できるようになってきた。しかしながら、一方で、現実的な提案なのか、あるいはファンタジーのある案なのか少しわからなくなってきたところがあって、 応募者の方が何を我々に訴えたいのかっていうことが、なかなか読み取ることが難しい作品が多かったですね。
    その中で、社会的共通課題を解決するのにCLTが非常に優れているという選択をされたものをあえて残したのですが、こうした状況にも関わらずこれだけの3点の作品が残ったことについては非常に良かったという印象を持っています。

  • 審査員賞について

    都市というのは再開発をしていけば、問題が解決するかのように考えられていますが、実は、非常に小さな個の暮らしの積層だと思うのです。したがって、経済効果から言えば、大規模に再開発をして生産性を向上したり、あるいは、綺麗な街になったという答えがベストかと言うと、暮らしという観点からみるとそうでもないと思うのです。
    やはり、そこに住む人にとっては愛着心があるし暮らし続けたい思いもある。そして環境というのは、非常にヒューマンスケールだと思うのですが、一方で、それは街全体としてみれば、個人にはプラスに働いても、街全体に対しては必ずしもプラスに働かない側面も多い。
    例えば木造密集地帯のように都市防災の観点から言えば、そこが危ないだけではなく、むしろ、その危うさが都市全体を巻き込んで都市全体を良くするという可能性もあるわけです。
    しかし、その土地とその場所と人の縁(えにし)とか、その場所を巡って、お互いにそこに同じ生活、暮らしをしているという住人のつながりいうようなものをベースにした街の魅力も捨てきれない。
    この矛盾を解決するには何がよいか。たとえば、CLTの防火性能とか、あるいは積層していく床をどんどん高い方向に積み上げて、新たな空間を作り出すという、構造とその機能が一体化しているような、いわば部材だからこそ上手に活用して、そして、裏路地みたいなものを新たな形に蘇らしていこうという考え方は、非常に新たなフロンティアを広めることができる印象を持ちました。いわば、CLTの可能性と街を作っていく可能性を提案している案だと思いました。

  • 来年のCLTコンテストについて ― CLTの向かう道

    CLTの向かう道は、基本は自立循環的な地球環境をどう作るのかということ。地球上にある生物資源の最たるものである森林が健全であるかどうかということは地球の未来時計をどれだけ長くするのか、簡単に言えば、継続的な未来をどれだけ担保できるのかとイコールな訳です。二酸化炭素の問題にしても、あるいは、気候変動の問題にしても全てそうですが、地球の資源も死んだ財産ではないアセット、つまり生きたアセットとして活用していくには、木材をどれだけ利活用するのかがすごく重要で、それまであった木材の脆弱性の部分というか木材の持っている機能が非常に脆弱な部分をCLTは補って余りある。だから非常にそういう面では地球環境の未来というSDGs(エスディージーズ)だとかを考えてみても、このCLTという部材は我々が選択すべき素材だと思う。
    今度は非常にドメスティックな発想で言うと平成という時代が来年終わる理由、つぎの時代はどんな時代であるべきなのかと言ったときに、さっきも申し上げたとおり、単に未来がポジティブに開けてます、という答えをコンテストの結果で出してくるんではなくて成熟した社会の中でCLTはこんな風な使われ方があるんですよと。ハピネスとCLTという関係でテーマをつけていただくと面白いかもしれません。

涌井史郎

審査委員賞「タテヨコ~CLTによる未来の高層ビル~」